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【和歌山チーム】岡山県備中高松城見学記(太田城との比較理解)

和歌山県和歌山市太田城との比較理解のために

太田城の水攻め及び築堤について理解を深めるために、岡山県備中高松城を見学してきました。

岡山県チームの皆様、越境してしまいすみません。

越境調査なので、提示する図と写真の解説を中心に報告いたします。

備中高松城は、JR桃太郎線備中高松駅から徒歩で見学できます。

図1 備中高松城復元図(トレースによる一部改変)岡山市教育委員会 2000 『三の丸跡発掘調査報告書』P40
図1 備中高松城復元図(トレースによる一部改変)岡山市教育委員会 2000 『三の丸跡発掘調査報告書』P40
図2 備中高松城と水攻め築堤推定位置図 国土地理院 1/25000を元にS=1/10000000
図2 備中高松城と水攻め築堤推定位置図 国土地理院 1/25000を元にS=1/10000000
図3 備中高松城と水攻め築堤推定位置図 図2を元に大日本帝国陸地測量部 『真金』明治28年測量 明治31年発行に落とし込み S=10000
図3 備中高松城と水攻め築堤推定位置図 図2を元に大日本帝国陸地測量部 『真金』明治28年測量 明治31年発行に落とし込み S=10000

図4 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図
図4 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図

図5 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図 備中太田城と築堤の位置を記載した図     S=10000
図5 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図 備中太田城と築堤の位置を記載した図     S=10000

この図から、西から東に延びる微高地が認められる。1985年6月25日に起きた大水害の後、かなり地形に手が加えられている可能性もあるが、1985年4月17日撮影の航空写真と2020年6月16日撮影の航空写真を比べても水田の形状に大きな変化は認められない。おそらく水田部分は1947年以降とあまり変わらないままと考えられる。

よって、現在の地形を元に水攻めの水没範囲を推定することはあながち間違いではないだろう。

西から東へ延びる微高地は、高さおおよそ7m~9m程度、備中高松城周辺の高さは4.7~5.3m程度、備中高松城の高さは、5.4m~7m程度と考えられている。備中高松城を水没させない程度の水位となると、5.4m~6m程度と考えられる。備中高松城は明治の地図や1947年の航空写真を見る限り、かなり水田化が進んでおり、本来の高さよりはかなり低くなっている可能性は高い。

そのため、備中高松城周辺には深さ1m程度の水が押し寄せたと推測できる。

備中高松城2の丸より本丸を望む
備中高松城2の丸より本丸を望む
備中高松城二の丸跡(西から)
備中高松城二の丸跡(西から)

備中高松城三の丸跡(南から)
備中高松城三の丸跡(南から)
備中高松城 船橋跡から三の丸を望む (南東から)
備中高松城 船橋跡から三の丸を望む (南東から)
蛙ヶ鼻(蛙ヶ鼻堰堤跡)(西から)
蛙ヶ鼻(蛙ヶ鼻堰堤跡)(西から)
1985年6月25日に起きた大水害によって水没した備中高松城1999年8月撮影                林信男 1999 『備中高松城水攻の検証』 巻頭カラー挿図
1985年6月25日に起きた大水害によって水没した備中高松城1999年8月撮影                林信男 1999 『備中高松城水攻の検証』 巻頭カラー挿図


図6 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図 築堤範囲新案提示
図6 国土地理院 GISサービス 色別標高図 50cmごとの色別図 築堤範囲新案提示

1985年6月25日に起きた大水害で備中高松城周辺は水没したが、その奥には微高地上に建つ家屋がみえる。北西から南東へと延びる微高地状の地形も勘案すれば、従来いわれてきたような築堤の長さは必要ないのではと考えられる。また、築堤の高さであるが、蛙ヶ鼻周辺は4.5m前後である為、7m以上の高さとするためには2.5~3.2mの高さが必要となる。ところが、三手地区周辺だと7m以上の高さとするために必要な築堤の高さは、0.5~1.5m程度で十分となる。これなら、わずか12日間で完成させることも可能かもしれない。

省エネ築堤であったためか周辺地形が5.5m以上の地区では、和歌山県の太田城の築堤ほど、明治期の大日本帝国陸地測量部での地図に痕跡らしきものが確認できない。

和歌山県の太田城の築堤は低い地形の範囲に築かなければならなかったため、ほほ、同じ高さが必要だったとみられ、必要な労力に大きな差があったと思われる。


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